いつか晴れた日に
定時を少し過ぎた頃、自分の仕事を終えて「お疲れ様です」と事務所を出て行った亜紀の背中を追いかけた。

一日でも早く誤解を解いて、今まで通りの友達に戻りたい。それには、なんとか話をしなきゃ。

「ちょっと、待って」
エレベーターを待っていた亜紀は、わたしを見るとムッとした表情で、非常階段に向かって歩き出した。

「亜紀、話があるの」

「わたしには、無い」

「お願い、待って」

咄嗟に亜紀の腕を掴む。

次の瞬間、パシッと破裂音がして、手の甲にピリピリとした痛みが走った。


「……亜紀?」

「馴れ馴れしく触らないで」

亜紀は非常口の扉を乱暴に開けると、その中に滑り込んだ。


「亜紀!」

非常口で反響する自分の声に眩暈がしそうだった。
亜紀にここまで拒絶されると、本当にどうしていいのかわからなくなる。

「わたし達友達でしょ?言いたいことがあるなら、無視するんじゃなくて、ハッキリ言ってよ!」

「友達?」

亜紀は立ち止まると、嘲るような表情で振り返った。


「よくそんなこと、言えるよね。呆れる」

「なんのこと?」

「はぁ?」

亜紀は盛大に溜め息を吐くと、わたしを睨みつけた。

「怜奈、わたしに言ってないこと、沢山あるよね?」
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