いつか晴れた日に
「……池永さんのこと?」

意を決して口を開くと、亜紀はほら、やっぱりと言うように冷やかな視線をわたしに向けた。


「わたしと池永さんの邪魔をして、怜奈は何がしたいの?」

「……邪魔がしたいわけじゃ」

「よく言うよ。わたしと別れてと池永さんに言ったくせに?」

「それは……」

もちろん、理由はある。だけど、それを亜紀に言う訳にはいかない。

この様子じゃ、池永さんが結婚することを亜紀はまだ知らないんだよね?


「怜奈も池永さんのこと、好きなんだ?」

「それは、違う」

「また嘘を吐くの?ストーカーの相談をして、何度も食事に誘ったり、家まで送らせたりしてたんでしょ?」

「だから、それは……」

はっきり、違うと言い切れないのが悔しい。確かに食事をして、家まで送ってもらった。涼の相談をしたのも事実。

少しずつ事実が捻じ曲げられているのに、それを上手く伝えることが出来ない。
こんな自分が悔しくて、唇をギュッと噛んだ。

「池永さんも怜奈のこと、迷惑だって言ってた。相手にされてないんだから、いい加減諦めてよ!」

ヒステリックに怒鳴る亜紀の声が胸に突き刺さっていく。


そうじゃなにのに。
池永さんは、遊びで亜紀と付き合っているヒドイ男なんだよ?
わたしを悪者にして、亜紀と別れるつもりは無いなんて。どこまで卑劣なの。





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