いつか晴れた日に
もしかして、わたしのことを覚えてないの?
それとも、何かの意地悪?
まさかね。嘘だよね?
涼に間違いない。だって、顔も声も名前も同じなのに……。
「次は何を?」
涼が不思議そうに、わたしの顔を覗き込む。
「あ、えっと」
ダメだ。仕事に集中しなきゃ。
手元の書類にざっと目を通しながら、簡単に説明を始める。
「じゃ、専用伝票の種類と書き方を。それぞれ書式が違います。返信用の封筒が必要なところとそうじゃないところとあります。切手は総務課でもらってくださいね。その時に書類に何枚使ったか記入を忘れずに。
マニュアルを作っているので、わからなければ、それを見てください。それから……」
視線を感じて顔を上げると、黒い瞳の涼と目が合った。
「……あ」
その曇りの無い黒い瞳に見詰められると、ドキドキと鼓動が早くなる。
やっぱり、涼だよね?
ねぇ、涼。何か言ってよ?
どうして、黙っているの?
この状況がもどかしくて苦しくて。ついわたしは口走ってしまった。
「前に逢ったことがありますよね?」