【アイノウタ】


煩いほどドクドクと鳴る胸を両手で押さえ、ふうっと深呼吸し、

「……あの、そんなに見られてると作りにくいんだけど……」

ボソッと言ったあたしの言葉には答えず、


「ねえ夏希さん。俺の事はテレビとかでご存知でした?」



あっ 今名前呼ばれたっ
そーいやさっきも呼ばれたっけ……

「あ、まぁ、勿論知ってるけど……?」

知ってるもなにもあんたっ
昨日までポスター貼りまくってあったっつーの!


「じゃあ、俺の事どう思います?」


んっ!? なにその質問!?

「やぁー、どうって訊かれても……あはは……」

笑えない。
どう答えりゃいいの!?

好きです。
あなたに恋してます。
いや、愛かも知れません。
今あなたが目の前に居る事が信じられません……夢みたいです。

ドキドキして胸が爆発しそうです……



って言えるわけないじゃーんっ!!


もう一度あははと笑ってごまかしたけど、

「もしかして嫌いだったとか……?」


どこか悲しげに目線を下に落とし、

「荷物の片付けの時もそうだけど、さっきだって俺が近寄るとすごい速さで逃げてくし……
でも心配しないで下さい。
俺、夏希さんの邪魔しないようにひっそり暮らしますから……」

……へ?

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