【アイノウタ】
「じゃあ、明日の朝9時に迎えに来るから」
ムサ男は振り返って優香の甥にそう告げるとあたしの方に向き返り、
「じゃあ、宜しくお願いします」
と言って車に乗り込み去って行った。
……ムサ男は一体何者なんだろ?
ポケーッした顔でムサ男の去った方角を見ながら考えてると
「あの、すいません、部屋は……」
「あっ ごめんなさい!どうぞ上がって!部屋は二階よ」
そう言って案内した。
部屋は階段を上がって奥のあたしの寝室と、一番手前のモモの部屋の間にあるフローリングの八畳の部屋。
二日前に届いた彼の荷物を宅急便の人に頼んで運び入れてもらっておいてある。
「部屋だけじゃなく、家の中のものは何でも好きに使ってくれて良いからねー……あ、荷物の整理手伝おうか?」
大きいダンボール箱が三つと、それより一回り小さいダンボールが四つ。
「えっ!? そんな、いいですよ!」
とは言ったものの、そのダンボール箱を見て溜息をつき
「すいません、やっぱお願いします……」
うん、素直でよろしい!
なんとなく好感が持てるのも、ムサ男を見た後だからだろうか。