Change the voice
夢と現実
「正直、使いづらいんだよね、君みたいなタイプは」


大学を中退してまで志した俳優という職業そのものから不採用通知を突き出されたようなものだった。


オーディション会場を後にした、その後の記憶は曖昧で、気がつくと、古く薄暗い喫茶店の隅に押し込まれるように座っていた。

そうして向かいの席では、何度か一緒に仕事をしたことのあるベテラン音響監督が遠慮なく煙草を吹かしていた。
立ち上る紫煙をぼんやりと見上げていたように思う。


「監督の言わんとすることには、お前も薄々感づいてんだろ?」

「……」


――――そう。

確かに自分には不採用続きの理由に心当たりがあった。


当時、俺は劇団の正所属を目指して、あちこちのオーディションを受けまくっていた。

しかし片っ端から落選し続け、結局小さい劇団の雇われ役者という形で細々と“役者”という体面を保ちつつ、その実バイトのみで生計を立てていた。


落選を繰り返し明らかになっていったのは、この無駄に高い身長がネックになっているという残酷な現実だった。


身長に対して、ルックスに華がない――――。


その為“帯に短したすきに長し”という例えそのままに、どこへ行っても中途半端で扱いづらいという印象を受けた。

悪目立ちが許されるネタ的存在ならばハマるのだが、演じられる幅が狭いために正採用で抱えておくのは難しい――――自分はそういうタイプの役者なのだと、自覚したのは最近の話だ。
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