Change the voice
上野さんと言えば、小さい頃から劇団で子役として活躍していて、高校卒業後にその活動を音楽業に移し、同時に声優も務める豪華な経歴の持ち主だ。
俺とは2歳しか年が違わないはずで、ビリケン絡みでかれこれ1年近い付き合いになるが、まさか結婚していて子供もいるなんてとても――――。
「見えないし、感じさせないだろ?彼、ルックスもいいし、音楽やっててそっちでも露出多いから、とにかくニュースになった時は大変そうだったよ。一旦冷却期間を置いたりしてたかな……まあ、それが功を奏したのか、ファン離れはそんなに多くなかったようだけど」
「あ!多岐川さん、桐原さん、お待たせしましたー。今川さん入りましたんで2本目お願いしまーす」
スタッフが呼びに来て、俺たちのおしゃべりは中断された。
煙草を灰皿に押し付けながら、多岐川さんはこう忠告した。
「お前はどっちかっていうと今そのビジュアルで売ってる時期なんだ。篠田さんの言う通りにしとけ」
言われながらそのビジュアルとやらを見回してみる。
くたびれたネルシャツに擦りきれたジーンズ、すっかり色の抜けたスニーカー……
「このビジュアルなら、どう動いたってバレなくないですか?」
口応えする後輩に、多岐川さんはあからさまに苦い顔をした。
「とにかくだ。言い付けは守っとけ。分かったな」
俺とは2歳しか年が違わないはずで、ビリケン絡みでかれこれ1年近い付き合いになるが、まさか結婚していて子供もいるなんてとても――――。
「見えないし、感じさせないだろ?彼、ルックスもいいし、音楽やっててそっちでも露出多いから、とにかくニュースになった時は大変そうだったよ。一旦冷却期間を置いたりしてたかな……まあ、それが功を奏したのか、ファン離れはそんなに多くなかったようだけど」
「あ!多岐川さん、桐原さん、お待たせしましたー。今川さん入りましたんで2本目お願いしまーす」
スタッフが呼びに来て、俺たちのおしゃべりは中断された。
煙草を灰皿に押し付けながら、多岐川さんはこう忠告した。
「お前はどっちかっていうと今そのビジュアルで売ってる時期なんだ。篠田さんの言う通りにしとけ」
言われながらそのビジュアルとやらを見回してみる。
くたびれたネルシャツに擦りきれたジーンズ、すっかり色の抜けたスニーカー……
「このビジュアルなら、どう動いたってバレなくないですか?」
口応えする後輩に、多岐川さんはあからさまに苦い顔をした。
「とにかくだ。言い付けは守っとけ。分かったな」