Change the voice
「まあ、ヤられる側よりヤる側で良かったじゃあないか」

とは、中学時代からの腐れ友人・三田の談である。

その見るからに高級そうな三つ揃いスーツは、俺のバイト先である居酒屋には不似合いなのだが、本人は至って気にしていないようだった。

社割で飲めるので、遠慮なく好きな日本酒を煽って応える。


「そう言われてみればそうなんだけど。しっかし最中にあんなベラベラしゃべるとか、本当すごい現場だった……」

「どんな台詞だったんだよ、ちょっとで良いから聴かせろよ」

「絶ッ対言わねえよ、バーカ」

「普段の自分だったら、絶対言わないような台詞を、啖呵切って言えるのが役者の醍醐味じゃんか」


三田の口から“役者”という単語が飛び出して、ほっとしている自分に気が付いた。

嗚呼、声優イコール役者として扱われているんだな・と。

あの日憧れたあの人と、同じ道を選びとってこれたのだなと。
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