Change the voice
初めて三田と会ったのは、中学のサッカー部だった。

俺は小学校の頃から、地元のサッカークラブに所属している程のサッカーファンで、寝ても覚めてもサッカーばかりしていた。

勉強も嫌いでなかったから、それなりに取り組んでいたのだが、三田に出会って世界が一変した。

勉強は学年一位、サッカーの技術も超一流。

そんな漫画みたいなやつが実在するのだと思った。

更に三田のやつは顔も良かったので、女連中にすべからくモテた。

同じクラスで同じ部活だったけれども、そんなヤツと友達になろうなんて思いもよらなかったのに、不思議なことに近付いてきたのは三田の方だった。


「君んちって、C市にある桐原法律事務所だったりする?」

「そうだけど……」


うちは両親ともに弁護士を務める、地元ではちょっとした有名人だったのだ。


「君も何、将来は弁護士になったりするの?」

「え?あ、ああ――――一応そのつもりだけど」

「サッカーのプロは目指さないの?」

「だって俺才能ないし」

「弁護士に才能は必要ないの?」

「まったく必要ない訳じゃないだろうけど、勉強は努力でなんとかなる部分も多いじゃん」

「……へぇ。意外と割りきってるんだね。面白いね、桐原」
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