1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「晴野さん、いらっしゃいますか。晴野さん!」

 玄関に近づくと外から声がする。

 誰でしょうか。聞いたことのない声です。

「はぁい」

 出ないことには帰ってくれないみたいですね。もう、強情な方ですねぇ。

 玄関の鍵を開け、ドアを開ける。そこにいたのは、たくさんの同じ服を着た人と、スーツ姿の人。
 家の前にはたくさんの車があって、それを取り囲むかのように近所の人がいました。

 何?この人たちは…誰?

「警察の者ですが、キミは蓬ちゃんかな」

「え?」

 スーツ姿のおじさんが、警察手帳を見せながら作った笑みを向けてきました。

 その笑みが怖くて、ドアを支える手が離れ閉まっていく。
 それなのに、スーツ姿のおじさんは閉まりかけたドアを掴んで開け放たれました。

「蓬ちゃんで間違いないね」

「え?…え?」

「被害者を保護!」

「え、や、やめて!!」

 スーツ姿のおじさんに引き寄せられ、あっという間に警察の格好をした人2人に左右から支えられる。

 なんで、なんで警察がいるの?なんで?被害者って何?
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