1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「よも!」

「…こう…ちゃん?」

「そうだよ。よく頑張ったな」

 バイクから落ちそうになったところを支えてくれたのはこうちゃんでした。

 さっきまで走れたのに、おかしいくらいに体に力が入らない…。

 こうちゃんの腕の中でぼんやりしていると、バイクを誰かに預けた雷斗くんが私の頭にかぶせていたヘルメットを取ってくれて、手を握ってくれました。

「蓬!」

「よも!」

 気づけば焦った表情の朔夜さんと輝星さんが目の前にいて、その後ろには渉さんと焔さん、凪さんの姿も見えました。

「雷斗、どうして蓬を…」

「…俺ん家に居たんです」

「え?雷斗の家に?」

「とにかく、話しは後だ。蓬を休ませるのが先だろ」

 遠くで声がする。

 誰かに抱き上げられたと分かった直後、私の意識は途絶えた。
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