1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

親 雷斗side


 朔夜さんが抱き上げた直後に意識を失くしたよもちゃんに渉さんが慌てて様子を見ると、ほっとしたように眠ったみたいと苦笑を浮かべた。

 その場にいる全員で息を吐くと、朔夜さんはよもちゃんを抱いたまま倉庫へ向かう。
 その隣を歩く輝星さんはよもちゃんの顔を覗き込んでいるみたいだ。

 倉庫の中は静まり返っていて、意識のないよもちゃんを見るとその表情を曇らせる奴も多い。

 当たり前だ。よもちゃんは遠慮して最近は来ないけど、中学の頃は毎日のように遊びに来てみんなに甘えてたらしい。
 だから、よもちゃんが行方不明になってしまったとき、真っ先に探しに行った。
 でも、見つからなくて途方に暮れていたんだ。

 朔夜さんは幹部室に上がると、その3人がけのソファによもちゃんを寝かせた。
 すかさず焔さんがよもちゃんに毛布を掛けると、深いため息をこぼす。
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