1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「…特徴は?」

「歳は40代後半の女性。見るからに高級そうな毛皮のコートを着ていました。背はヒールを履いていたんでよく分かりませんが、桃さんより少し低いくらいだと」

「そうか…。蓬はなんて言われたんだ?」

「多分、携帯に録音していると思います。でも晴野は、自分は捨てられたんだって言って、泣いたんです」

「そう…か」

 清牙さんは表情を歪めると、涙の跡の残る晴野の頬をそっと撫でた。

 その表情は親になりきれなかった自分への憤りと、晴野の中で自分が親になれなかったことへの悲しみが混ざり合っているようにも見えた。

 ぼんやりと見た先の時計には21時をだいぶ過ぎていて、智希くんと望亜ちゃんは眠ってしまった後のようだった。
 だから、リビングには清牙さんと桃さんと俺と晴野だけ。
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