1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「蓬は俺の娘だ。誰にもやらん」

「そうね。私たちが立派に育てて世界で1番幸せな人生を送らせてあげるんだから」

「秋空くん」

「は、はいっ!」

「蓬のこと、頼んだよ。蓬は俺の手から嫁に出す」

 ものすごいプレッシャーを感じる。のは気のせいか?

 未だに殺気を漂わせている清牙さんと桃さんに、ただただ嵐が過ぎるのを待つことしか出来なかった。

 不安な色を残したままの晴野に、そっと笑いかける。

 なぁ、お前の父さんと母さんはお前のことをこんなに愛してくれているんだぜ。
 だから、もう泣かなくていい。

 あんな最低な屑のことなんか、全部忘れちまえ。

 眠っている晴野に、そう心の中で語りかけた。
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