1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「お母さん!!」

「え?…よも?」

「ねぇね!」

 何とか顔を上げたお母さんと、立ち上がって抱きついてきた望亜を受け止めて、お母さんの手を握りしめる。

 お母さんは表情を歪ませながらも、どこか安心したように笑ってくれました。

「よかった…無事で…」

「うん。それより大丈夫?」

「…破水しちゃったみたい…」

「晴野、救急車呼んでくる」

「桃さん、しっかり!」

 神野くんがすぐに携帯で救急車を呼んでくれて、雷斗くんと一緒にお母さんを仰向けに寝かせる。

「ねぇ、よもちゃん大丈夫なの?」

「え?」

「だって、破水してるって…」

「大丈夫ですよ。破水したからと言ってすぐに生まれるわけじゃないです」

「え、そうなんだ…」

 雷斗くんは不思議そうに首を傾げていましたが、私も智希と望亜がいるから知っている知識です。
 剣人さんと一緒に分娩室にお母さんとご一緒した時もあります。
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