1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「…そう言えば、清牙さんは晴野の生みの親、知っているんですか」
「あぁ。たまたま知る機会があってね。…蓬には何も言っていないが、蓬の父親も動き始めているんだ」
「え、でも、探す意思はないって…」
「理由は、あの女とそう変わらない。後継者だ。蓬の父親は1代で会社を設立したんだ。その後継者に、あいつは血が繋がっていなくても、法律上自分の子に継がせたいらしい」
「そんな、じゃあ、晴野の気持ちなんて何も考えていないんじゃないですか。それに、何で今更」
「本当はね、再婚相手に連れ子がいたらしくて、その子に継がせるつもりが、その子が反抗期で酷く荒れているらしい。学校の呼出もあり、汚名を負った奴に継がせる気はないと。それで、都合よく蓬の存在を思い出したんだろう」
そりゃ、あんな母親だったら荒れるよな…。
俺も絶対に荒れる自信がある。いや、絶対に荒れるの間違いだ。
それにしても、夫も夫で妻も妻。
絶対、こんな大人だけにはなりたくないと固く心で誓った。