1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「思い出したくないのですか?」
「…あなたには、話したくない。担当を変えていただければお話してもいいですよ」
「それは困りますね…。そう言えば、蓬さん、お父様が心配されていましたよ」
思わずその言葉に背筋が凍り付いたのを自覚しました。
あの人が警察に私が逃げ出したことを言えるはずがない。だって、そうすれば、私を監禁していたことを知られるから。
でも、この人は知っている。
それは、この人が…父親と繋がってる。
そういう意味ならもう、分かる。
証拠が消えたのは、この人が集めて全部消したんだ。
誰にも疑われることなく、部下たちさえも取り込んで、この人がお父さんを悪人に仕立て上げたんだ。