1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
詳細は会って話したいという依頼主は時間も場所も指定してきました。
少しどころがだいぶ癪に障りましたが、仕方なく出向いたんです。
指定されていた場所は、最寄から10駅も離れた場所。都会エリアです。
夜だというのに、ネオンがあちこち光っていて、夜だという印象をあまり与えません。地元よりもずっとにぎやかですね。
「…あれじゃねぇか?」
神野くんが指差したのは、人々がよく待ち合わせに使う時計塔の下。
見るからに高級そうな毛皮のコートを着た女性です。
歳は40後半と言ったところでしょうか…。
特徴に毛皮のコートと書いてあったので、間違いないでしょう。
「どうする?」
「とりあえずここから様子を見ていて。印象を残すようなことをしないこと」
「おう」
変声機の電源をつけ、神野くんにはその場に残ってもらい、1人で依頼主に近づきます。
人ごみに紛れ、さりげなく隣に行くと、彼女は気づいていないのか周りを見回しています。