1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 玄関を開けると、目の前には立派な書道の掛け軸が飾ってありました。
 見事な達筆で書かれた文字は『真心』という2文字。これは広西さんの作品です。

「あなた。いらっしゃいましたよ」

「あぁ」

 奥さんが奥に呼びかけるとすぐに返事がありました。

 そして姿を見せたのは白髪に無精ひげを生やし、きっちりと着物を着た男性です。

「お久しぶりです。広西さん」

 この厳つい初老の男性が元警視監、広西さんです。

 広西さんは表情を緩め、笑みを浮かべてくれました。

「あぁ。久しぶりだね。後ろの2人は?」

「情報屋としての仲間、ですね」

「…そうか。上がりなさい」
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