1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
どれだけ走ったんだろう。もう、限界…。
少しだけ振り返るといつの間にか男は1人になっていて、その足取りも随分重い。
もうすぐ逃げ切れるかもしれない。
そう、思ったのに。
突然目の前から車が滑り込んでくる。急ブレーキした車から黒いスーツ姿の男たちが飛び出してくる。
立ち止まり、神野くんと雷斗くんが背中合わせに立つ間に入れられる。
あっという間に周りを囲まれてしまった。
「っくそ」
「随分な歓迎で」
舌打ちした雷斗くんも、どこか余裕さを漂わせる神野くんも、息が上がっていて冬なのにこめかみから汗が伝う。相手は大人10人くらい。
下手をすれば増えてしまうかもしれない。
どうする?このまま捕まるわけにはいかない…!