1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「晴野、逃げろ」

「な…」

「逃げて。俺たちで何とかする」

 神野くんも雷斗くんもとっくに戦闘態勢に入っていて、集中力が研ぎ澄まされていっているのが分かった。

 いつの間にか、上がっていた息は静まって、獣のように鋭い視線が周囲を囲う男たちを射抜く。

 そんな2人の姿は現役のお父さんの姿にどこか重なる。

「晴野、行け!」

 神野くんと雷斗くんが動き出したのはほぼ同時。

 2人が殴り倒した人は呆気なく地面に倒れる。そして、出来た抜け道。

 そこを駆け抜ければいい。

 そんなこと、分かってる。
 でも、ここから逃げて、私は、2人は本当に逃げ切れるの?
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