1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 公庄先生は立ち上がると、一旦資料室に入って行くと、何かのファイルを持って戻って来ました。

 それを無言で差し出して来たので、受け取ると中を見させてもらいました。

「…これ、私たちの入学者名簿ですよね」

「あぁ。でも晴野の名前がなくなっているんだ」

 公庄先生の言う通り、私の名前はどこにもありませんでした。

 黒く塗りつぶされたわけでもなく、本当に最初からそんな名前がなかったかのように消されている。

「これだけじゃない。出席簿も、成績表も。学校中の資料、記録から晴野がいたという痕跡が全くなくなっている」

「なんでそんなこと…」

「警察に資料提出を厳命されてね。帰ってきたときにはこのざまだ」

「…つまり、警察が証拠隠滅を?」

「もちろん、問い詰めたがしらを切られるばかりでね」

 公庄先生はすまないと悔しそうに表情を歪められました。
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