1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「いいか?」

「あ、大丈夫です」

 外からの声に応えると、公庄先生に腕を掴まれた担任が強引に部屋に連れ込まれました。

 担任は私を見ようとはしません。

「晴野に、謝るんだ」

「ッ…」

「公庄先生、いいです。…先生、私が聞きたいのは1つだけです。別に先生を責めるつもりはありません」

 担任はビクッと肩を震わせ、恐る恐ると言ったように視線を合わせてくれました。

「誰に、頼まれたんですか?」

「…分からない。ただ、断れば家族に危険が及ぶと言われて…。晴野、すまなかった」

 頭を下げてきた担任に悪気など感じられませんでした。

 ただ、家族を人質に取られて本当に仕方なくやったんでしょう。
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