1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「はぁ、郁造。こいつの相手したらきりねぇから中入ろうぜ」
「そうだな。よももと秋空だっけ?入りな」
なんだか疲れたような声を出すお供さんと若さんです。
2人の案内で中に入れてもらうと、厳つい男性の方々があちこちにいました。
でも、若さんが通るたびに何かをしていた男性たちはそろって頭を下げて若さんが通り過ぎるのを待つ。
上下関係が厳しい世界。私のおふざけが通じる2人はどこにもいませんでした。
やがて通されたのは広間で、広間にはまだお昼途中の厳つい男性がたくさんいました。
「おぉ。よももか」
「よももだ。でかくなったな」
それでも、懐かしい声が私をやっぱり変な呼び方で呼ぶ。
よもと呼ばれることはあっても、よももって呼ぶのはこの林組の方々…いえ、2代目の方々だけです。