1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「よもも、飯まだなんだろ?カレーだけど食うか?」

「いえ、遠慮しときます」

「あぁ?てめ、さっき食ってねぇって言ったろ。2人分持って来い」

 あ、お供さんが余計なことを…。

 若さんに連れられて座らされたのは上段で、神野くんはお供さんに脅されて強制的に着席されました。

 そしてやって来たのは2人分のカレー。
 私と神野くんの前に置かれたものの…。

 私も神野くんも手をつけようとはしませんでした。

 神野くんはおそらく緊張で、私はこのカレーが怖いので。

「よもも、冷めんうちに食べろ?」

「…若さん、これ若さん仕様ですよね」

「っぶ…あはは!心配すんな。俺の分は俺しか食わねぇよ」

 爆笑する若さんですが、笑っていられないです。

 何と言っても、若さんは大の辛いもの好きで、ありえないほどの辛さの料理を食べるんです。

 幼い私はそんなこと知らずに若さんのおにぎりをひと口だけ食べたことがあって、あまりの辛さに大泣きしてしまいました。

 おにぎりの具が唐辛子なんて初めて見ましたね。
 それ以来、私は食事時になると若さんから一目散に逃げて行ったそうです。
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