1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「で、よももが俺に何のお願いごとがあるんだ?」
カレーをいただいた後、私たちは若さんの仕事部屋に案内されて、若さんとお供さん、私と神野くんで向かい合って座っていました。
座布団に座る私たちのそれぞれの間にはお茶とお茶菓子がありましたが、誰も手をつけない。
先ほどまでとは違い、林組の若頭としての態度で私たちに向かう若さんは、鋭い視線を私に向けてくる。
しっかりと居住まいを正して、私も真剣な表情で若さんに向かう。
「…晴野清牙さんの事件、ご存知ですよね」
「あぁ。あのデマ騒動な」
「あの事件に極道が関わっている可能性があるんです」
「…お前は、俺にそれを突き止め、証拠を出せって言いたいわけか」
「要約するればその通りです。引き受けてくれませんか?」
断られるとは思っていない。でも、もし断られたら、裏で動く人たちに対しての圧力はない。
若さんのことさっきからかわないほうがよかったかもしれないです…。