1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「…報酬になにをくれる?」

「…何が望みですか?」

「そうだな。…お前の隣に居る奴を貰おうか?」

 若さんの視線が私から神野くんに移る。神野くんの表情が急に硬くなり、息を飲んだのが分かりました。

「それは出来ません。彼はあくまで付き添いなので」

「なら、お前が来るか?」

 若さんは口角を上げると立ち上がり、私の前に来ると顎を掴んで上を向かせられました。

 若さんの視線が私を舐めまわすように見つめる。

「餓鬼だと思っていたが、もう16だもんな。その体で払うか?」

「…若さんがそれを望なら、いくらでも払いますよ。餓鬼の体でよろしければ」

「っは、よく言う。今もビクついてるくせに」

 そう言いながら、若さんのもう片方の手が頬から下へと下がっていく。
 その感覚に目の前にあの人が現れたけど、それも一瞬で消える。

 今さらなんだって言うんですか?

 さんざん知りもしない人に触られたんだ。それが知り合いの年上になるだけです。
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