1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
2人きりになると、若さんは私に視線を向け、口を押えていた手を離しました。
「お前、さっき言ったこと本気か?」
「こんな状況で嘘つくと思います?…お父さんを助けるためなら、私の体を差し出すことくらい何度だってします」
若さんはしばらくじっと私を見つめてきていたけど、急に特大のため息をついて私の上から退いてしまいました。
「はぁ、やめやめ。何で娘のお前抱く?つか、そんなことしたら清牙さんに殺されるわ」
若さんの盛大な溜息と共に差し出された手に掴まると、起こされてそのまま抱きしめられちゃいました。
「もっと、自分を大切にしろ。お前が傷ついて助けられても清牙さんは喜ばねぇよ」
「…必要なら、私やりますから」
「女の子がそんなこと言うんじゃねぇ。ったく、とんでもねぇ育ち方したな」
若さんは呆れたように本日二度目のため息をついて、ぽんぽんと頭を撫でてくれました。