1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 2人きりになると、若さんは私に視線を向け、口を押えていた手を離しました。

「お前、さっき言ったこと本気か?」

「こんな状況で嘘つくと思います?…お父さんを助けるためなら、私の体を差し出すことくらい何度だってします」

 若さんはしばらくじっと私を見つめてきていたけど、急に特大のため息をついて私の上から退いてしまいました。

「はぁ、やめやめ。何で娘のお前抱く?つか、そんなことしたら清牙さんに殺されるわ」

 若さんの盛大な溜息と共に差し出された手に掴まると、起こされてそのまま抱きしめられちゃいました。

「もっと、自分を大切にしろ。お前が傷ついて助けられても清牙さんは喜ばねぇよ」

「…必要なら、私やりますから」

「女の子がそんなこと言うんじゃねぇ。ったく、とんでもねぇ育ち方したな」

 若さんは呆れたように本日二度目のため息をついて、ぽんぽんと頭を撫でてくれました。
< 257 / 411 >

この作品をシェア

pagetop