1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「よも、気を付けてね」
「了解。あと、外ではよもって呼ばないでね」
「分かってるわ。声をかけないようにする」
お母さんは苦笑を浮かべて、ぽんぽんと頭を撫でてくれました。
ちょうどピンポーンと音がして、智希が出迎えに行くと、剣人さんがお母さんを迎えに来たみたいです。
途中で智希と望亜、咲は紅葉さんに預けていくそうです。
私はというと、1人で呑気に電車で行きます。
「よも、気を付けてな」
「はい。それじゃ、後で」
剣人さんにも見送られてとりあえず駅まで行きます。
ポケットの中には変声機があるので、話す時は男の子の声で話します。
裁判所までは特急の電車で5つ目の駅で乗り換えてそこから地下鉄で3つ目です。
電子カードで改札を抜け、ホームに上がると見慣れた姿の2人がいて、さりげなく近くによって、電車に乗り込みます。
あ、もちろんその2人は神野くんと雷斗くんです。
ちょっと仲良くなったのか、ケンカしている姿をあまり見なくなりました。