1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 何にも知らないくせに。

 お父さんとお母さんがどれだけ苦労して私を育ててくれたか、知らないくせに。

 嘘に騙されてるくせに…。

 あの人に非はない。
 でも、お父さんとお母さんを侮辱されるのは許さない。

「キミ、静かにしなさい」

『…本当の事実、知りたくねぇか?おっさん』

「は…お、おい!言うこと聞け!」

 神野くんが慌てているのが分かる。雷斗くんも真っ青になっています。

 裁判官の表情が険しくなるのも構わず、挑発するように笑う。

『みんな騙されて滑稽だよな。本当の悪役が誰かも知らないで』

「何を言ってる」

『…でっち上げだって言ってんだ。この事件そのものが!』

 私の言葉に、一般の人々から動揺が走る。

 それでも、検察も裁判官も動揺しなかったのはさすがプロと言うべきでしょうか。

 でも、その余裕もいつまで続くかな?

 ね、背後で震えてる大宮怜。
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