1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 シンッと静まり返った法廷で、父親は表情を硬くさせたまま、私を睨みつけてきます。
 でも、ただ焦りで染まるその顔に迫力なんてありません。

「…わかった。場所は私が手配しよう。…裁判長、申し訳ありませんが、この度の裁判、一旦取り消しにしていただいてもよろしいでしょうか?」

「…えぇ、こちらも今その判断を下そうとしていました。ただ、キミの名前を教えてくれないか」

『俺?…そうだな。記録にいるんだっけ?なら、情報屋とでも書いとけば?』

 情報屋という言葉に父親の再婚相手の女性…雷斗くんの母親が肩を揺らす。

 あぁ、そう言えばこの人、前に脅したんだっけ?たしかあの録音も残ってますね。

「ふざけるな!名前を言いなさい!!」

『まぁ、…今度の対決の時にお教えします。それまでは匿名希望で』

「ふざけているのか!」

「裁判長!…2月18日だ。場所はマスコミに伝えよう」

『話が早くて助かります。…それじゃ、俺はこれで失礼します』

 呼び止められる前に法廷から姿を消しました。

 絶対に2週間後、全部終わらせてみせます! 
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