1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「大宮?」

「ッ…な、なに?」

「…別に。うさんくせぇ顔してたから」

「は!?…どういう意味だよそれ…」

 片手に資料を持った神野は俺の質問には答えず、パソコンの前に座ってまた打ち込んでいく。

「お前がいなかったら中学の奴らに証言もらえなかったんだろ?」

「え?」

「それで十分なんじゃねぇの?」

 神野は一切パソコンから視線を外さない。

 …っは、神野に慰められるなんて、正直ムカつく。

 でも、よもちゃんが情報屋だって知らなかった時も、神野はさりげなく慰めてくれてる。

 本当に、俺の中だけでも最低な奴だったら、よもちゃんを奪い返せるのに。
 神野は、なんだかんだ言って、俺とよもちゃんの関係を認めて、理解して行動している。

 だから、ムカつくんだ。
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