1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「なぁ雷斗、こいつなんか思いつめてねぇか?」
「…そりゃ、もうすぐ決着をつけようって言うんだからそれくらいは…」
「いや、そうじゃなくて…。なんか、変な感じがするんだよな」
「なんだよそれ」
「知らね。強いて言うなら幼馴染の勘ってやつ?」
「…ついこの間まで会ってなかった奴にそう言われてもな」
なんか、ムカつく。浩介の余裕さが、幼馴染と言うだけでもムカつくのに…。
「俺も変な感じがする」
「神野もかよ!」
パソコンを見たままの神野は、手を止めるつもりはないらしく、打ち込み続けたまま口を開いていた。
器用だよな、神野って…。
「変ってどんな感じだ?」
「…妙に元気に振舞ってるだろ」
「確かに…。なんか、よもちゃんらしくないかも…」
「…嫌な予感がする」
神野がそう漏らしたひと言に、ただならない感じがした。
それが杞憂でなかったことにこの時気付けていたら、よもちゃんの不安が少しでも軽くなっていたのに。
雷斗side END