1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「失礼します!」

「あれ、遥人?」

「はい!浩介さんの代わりにココア持ってきました!」

「あぁ、ならついでによもちゃん見張っといてくれる?」

「了解です!!」

 雷斗くんついでにって、私は脱走したりしませんよ!

 無言で怒っていることを伝えるために雷斗くんを見つめていましたが、無視されました。むぅっ!

「晴野さん、どうぞ!」

「え?あ…ありがとう」

 目の前に差し出されたココアはこうくんが作ったもので間違いなくて、それをわざわざ持ってきてくれた遥人くんにも申し訳ないですね。

 マグカップに入ったそれを受け取って、ちびちびと飲み始めました。

「あの、晴野さんってココア薄めるんですね」

「あ、うん。濃いと甘すぎるので」

「俺もあんま言えないっすけど、ココア薄めるんです。似てますね俺たち」

 ニコッと笑った遥人くんは無邪気な笑顔で、かわいいです。
 なんだか弟みたいです。
< 329 / 411 >

この作品をシェア

pagetop