1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「晴野」

「はい?」

 顔を上げると、神野くんが目の前にいて、気づいたときには抱きしめられていました。
 腰に手を回すと、神野くんが顔を覗き込んできました。

 …ち、近いです…。

 でも、神野くんは離れようとしなくて、ただじっと私の顔を見つめてきました。

「…晴野、全部解決したら言いたいことがある」

「…はい」

「約束、覚えてるか?」

「覚えてます」

 雷斗くんに助けられたその日、神野くんの家に泊まった時、約束したこと。

 ちゃんと覚えてます。私のわがままに付き合ってくれた神野くんと、約束したこと。

「ならいい。…絶対、勝つぞ」

「はい!」

 離してくれたので距離を取りますが、うぅ、まだ甘えたりないです。

 なので何の遠慮もなしに腕の中に飛び込むと、ちゃんと受け止めてくれて、頭を撫でてくれました。
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