1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 その後無事に男の子に変装し直した遥人くんは、誰がどう見てもあの日法廷の傍聴席で声を上げた少年の姿でした。

 ただ、問題なのが自信なさげな表情です。

「晴野さん、俺代わりなんて…」

「絶対に声を出さないでください。後、自信を持って。あなたにしか頼めないことなんです」

「大丈夫だ!俺様も一緒だしな」

「幹部が護衛についてくれてんだから、心配すんな」

 焔さんとこうくんが励ますと、少しだけ顔を上げた遥人くんは、何とか頷きました。

 一度ウィングを取ってもらったこうくんと焔さんに先に駅に向かってもらい、入れ替わる場所で先に待機してもらいます。

 2人を見送った後に、朔夜さんに電話をかけて準備は完了。

 今は昼の12時。そろそろ行きますか。

 立ち上がった私に、雷斗くんも遥人くんも表情を引き締める。
 智希を膝に乗せた神野くんの表情も引き締まりました。

「…行きます。とりあえず、会場で会えるように」

「だな」

 ここからは別行動です。家の周りに不審者はいません。出るのは今しかない。

 お母さんたちに見送ってもらって、駅へ歩き出しはじめました。
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