1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 電車が出発する。

 静かな車内。当たり前なのに、今はその静寂が酷く気持ちが悪いです。

 男たちは遥人くんがあの少年だと確信しているようで、じっと遥人くんを睨んでいました。

 さっき電話で本物を見つけたと報告していた辺り、もう嵐鬼の錯乱も意味を成してないかもしれない。

 念には念をと追われてる人たちもいるかもしれないけど、こっちに向かっている可能性も高い。

 朔夜さんにメールを送ると、まだ追われているメンバーが大半だという返事がすぐに返ってきました。
 本物と言っても、やっぱり信用できないのかもしれないですね。

 追手さんを監視しながら思っていると、電車は△駅に止まる。

 視線を向ければ、人ごみに混じって、神野くんだけが外に押し出されるようにして見えた。

 でも、降りる人が終わって、乗ってきた中には神野くんに変装したこうくんが乗ってくる。

 追手さんは気づいていないようですね。

 神野くんに気を付けてと送ると、ふざけているのか可愛らしいスタンプが返ってきました。
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