1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
成長 清牙side
刑務所の職員2人と運転手が同乗して、事件の真相を議論する会場に向かう。
手には手錠がはめられているものの、車内の雰囲気は重々しいものではなかった。
「晴野さん、本当にいいんですか?」
「えぇ、俺はあの子を信じます」
話しかけてきたのは、まだ若い職員で、よもが面会に来たときに案内してくれた人だ。
あの面会が終わってからやってきたこの職員は、蓬の言葉に疑問を持って会いに来た。
それ以来、時々話に来るようになって、今ではすっかりこの事件が嘘であると確信しているらしい。
自分でいうのもなんだが、犯人が言うことを信じていいのか?
「…娘さんは、来ますかね」
「来ますよ。あの子は怖がりなくせに大切な人を守るためなら、どんな奴にもお立ち向かう。そんな子ですから」
そもそも、あの少年がよもなんだからな。
全く、どんどん素行が悪くなっていく。そろそろ情報屋も引退させた方がいいかもしれない。
…と、あんまり言い過ぎると過保護だって言って、頬を膨らませてきそうだ。