1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 少し遅れて到着したらしい弁護士が、俺の近くに座る。その表情ははらはらしたものだ。

 まぁ、ど素人がプロに言い含められないか心配なんだろうが、生憎よもは軟じゃない。
 なにせ、ヤクザも警察もその手の内に転がしてしまう子なんだから。

 まぁそれに気づいているかは分からないが…。

 時計を見れば13時55分。

 報道陣たちの声も小さくなり、今か今かと法廷で声を上げた少年を待つ。

 でも、よものモットーは時刻丁度に現れること。だから、まだ来ない。

「清牙…」

「桃、信じろよ。俺たちが育てたんだぜ?怖がりだが、仲間がいれば乗り越えられる」

「…そうね」

 許可をもらったらしい桃が、ぎゅっと手を握ってきた。
 その手を握り返しながら、その時を待つ。

 会場にいるのは剣人と颯人、俊也、広西さんに櫻高校の先生。
 こちら側の人間はそれだけだ。でも、全員よもの力を信じている。
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