1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
会場が緊張に包まれる。神野くんは用意されたパソコンを立ち上げて、準備しています。
雷斗くんは私に誰も近づかないように目を光らせています。
向こうは準備が整っているのか、ただ黙ってこちらを見つめていました。
「ん?…おい、何だこれ!」
神野くんが声を上げると、一緒にパソコンの画面を覗き込む。
見ればUSBに入ったデータのすべてを消し始めているじゃないですか!慌てて引っこ抜きましたが、おそらくデータが消えた。
すると、対面した席に座る父親が余裕を取り戻してるじゃないですか。
どれだけ姑息な手を使えば気が済むんでしょうね。
「どうかしましたか?」
確信犯のくせに!その嘲笑うような顔しないでくれませんか?
試しにもう1度USBをさしてみても、やっぱりデータはほとんど残っていませんでした。
軽くパソコンのプログラムを見てみると、USBの消去プログラムが組んであるじゃないですか!
もう、呆れるしかありませんね。