1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

「わ…私は…」

「ブブッ」

『雷斗!』

 声を聞いた瞬間、会場に響くくらい噴き出した雷斗くんの頭をボカッと叩かせていただきました。

 もちろん変声機で声変えましたよ。

 一瞬静まり返る会場。咳払いをして女の子を見ました。

『こっちの連れがわりぃな。どうぞ、続けて?』

 怖がらせないように意識して、軽く笑みをくわえて促すと、女の子は照れたように顔を赤くさせていました。

 あれま。そんなに男の子に見えるんですかね?

「わ、私は…ずっと…部屋に、い、い…いて…それで……言うこと、き…聞かないと……た、た叩かれたり…蹴られ、たり…して、て…こ、こわ…く…て…」

 ぎこちなく話す女の子に会場内は彼女への同情とお父さんへの批判の目が強まっていく。

 どうしましょう、これ。

 隣でまだ笑ってる神野くんの腕をつねってるんですけど、ついでに雷斗くんも。

 2人とも笑い過ぎですよ。
 ほらほら、こっちにまで非難の視線が…。

 何とか話し終えたらしい女の子は、そのまま父親の隣に座らされていました。

 時々フラッシュが飛ぶ。
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