1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

『更に、10月25日、当時2歳の蓬が交番に届けられる。だが、捜索願は一切出されなかった』

「嘘だ!!10月26日早朝、2歳の女の子の捜索願は確かに出されて…」

『その資料はこれか?』

 神野くんがタイミングよく出してくれた捜索願と書かれた紙。
 確かに日付は15年前の10月26日になっています。

 だけど…。

『これは虚偽だ。15年前の資料と今の資料の形式は変わってんだよ。なのに、なんで15年前の案件が現在使われてる形式で書かれてる?それにこの紙の劣化具合はどうだ?なんで15年前の紙がこんなきれいなんだよ!!』

 私に言葉に関口はすっかり黙り込んでしまう。

 つまり、最近つくられた物なんですよね?
 誰が作ったんだか知らないけど、せめて形式くらい整えましょうよ。

「失礼、あなたはこの情報をどこから持ち出したんです?これはおそらく警察内部の情報ですよね?なぜあなたが…」

『協力者がいるんだよ。俺にハッキング能力なんかない。それと、警察内部とはいえ、ありもしないことを堂々でっち上げてるんだぜ?それ、見逃していいの?』

 弁護士さんごめんなさいね。あなたに話させる気なんてさらさらありませんから。

 黙って席に着いた彼らを見て、文句がなさそうなので次に行きましょうか。
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