1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

『で、高校だ。高校には残念ながら書面とかで蓬が在学していたという証拠はない。でも、矛盾点から洗って行こうか』

 映し出された退学届。

 それに父親の顔が青ざめていく。

『これは、今年に入ってすぐに櫻高校に出された晴野蓬の退学届だ。でも、櫻高校の入学者名簿にも、クラスの名簿にも晴野蓬と言う名はない。さて、教えていただきましょうか?どうして在籍もしていない学校に晴野蓬の退学届けが出されているのでしょうか?』

 父親を見つめるけど、動こうとしない。まぁ、無理ですよね。

 こんなところに穴を作ってしまうなんて、バカとしか言いようがありませんね。

『何も言えませんか?ならいいです。今、パソコンを操作している彼は晴野蓬が高校で出会った友人です。名前を神野秋空くん。教えてくれますか?晴野蓬がどんな子か』

「…晴野は、家族思いで、優しい奴だ。怖がりで、1人でいいって言っておきながら、本当は誰かに甘えたくて、一生懸命自分を、家族を守る。そんな奴だ」

 なんだか、美化されていませんか?恥ずかしいです…。

『ありがとうございます。…ついでにですが、今大宮怜氏の隣に座る彼女は晴野蓬ですか?』

「違う。つうか、誰だよそいつ」

『だ、そうですが。教えてください。大宮さん、その子誰ですか?』

「この子は正真正銘、蓬だ!私の娘だ!!」

『そうですか。ま、たった2か月で何が起きたか知りませんが、いいでしょう』

 まだ正体を明かすつもりなんてありませんからね。

 さてと、どんどん行きましょうか。
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