1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「晴野」
『…大丈夫。まだ、ありますから』
「…分かった」
お父さんを見つめたまま、一度席を離れてまで声をかけてくれた神野くんに返事をする。
お父さん、知ってたんだ。私が妊娠してしまったこと、降ろしてしまったこと。
まだ、実感がなくて、正直体もきつい。
でも、倒れたとしても、どうしてこの人たちを許すわけにはいかないから。
「…あんたも親だろ?どうして、娘が嫌がることを強制したんだ」
「…私、は…」
『…清牙さん』
声をかけると、お父さんはすぐにマイクを返してくれました。
でも、席に戻るつもりはないようで、その場で立ったまま隣に居てくれました。
少し深呼吸をして、マイクを構える。
『もう、終わりにしませんか?まだ、やりますか?』