1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「蓬、かわいい」
「ッ…!キザ男」
「あ?…蓬限定の、な」
「ッ…!!!あきくんのばか!」
こんな低レベルの応酬しか出来ないとは…。不覚です。
散々からかわれて遊ばれると、あきくんの気が済んだのか離してくれました。
でも、やっぱり手はつないだまま。
「…なぁ、情報屋はやめるんだよな」
「…はは、あきくんには隠し事出来ないですね。…もともと情報屋は私の弱い部分から偶然生まれたものです。もう、影に隠れることはやめます。みんなと…あきくんと同じ場所に立っていたいから」
「そっか」
そんなこと、聞かなくても、分かっていたくせに。
情報屋は影。影が明るい場所に出るのはおかしいのに、多くの光を情報屋は浴びてしまった。
だから、影はもう、闇に紛れられない。
あきくんとつないだ手がぎゅっと握られる。
握り返すと、あきくんは私に視線を向けてきて、言いにくそうに口を閉ざしていました。