1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「あきくん?」
「…ごめん。1つだけ。お願いしたいことがある」
「はい」
分かってるよ。
あなたは、情報屋として出会った日から、ずっと何かを心の奥に仕舞いこんで、ギリギリのところでそれを留めていたから。
あきくんは深呼吸をして立ち上がると、私の前に立つ。
すると、いきなり深々と頭を下げてしまいました。
「情報屋に、依頼したいんだ。…俺の、父親の居場所、探してくれ!!」
「…頭、上げてください」
恐る恐る頭を上げたあきくんを、正面から抱きしめる。
驚いて目を見開いたあきくんは、されるがままになっていました。
「…ハルが、あなたの役に立てますか?」
「…うん」
「なら、情報屋として、最後の仕事。請け負います。…アキ、ごめんね。傍にいてくれて、気づいていたのに。見ないふりして…ごめん」
「ッ…どうでも、よかった。でも、蓬のこと、見てたら…親が…恋しくなって、いつも、手紙をくれるのに、親父からの一方通行で、俺の言葉は…親父に、届かない」
「届けさせるよ。あきくんの言葉。…苦しかったよね。寂しかったよね。…傍にいたのに、いつも支えてもらうばっかりで…ごめんね。今度は、私も背負うから」