1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「あれ、よも…」
「ただいま。お母さん風邪ひくよ?」
「え?あぁ、そうね。よも、手洗ったの?」
お母さんは起き上がると、はっとしたように手紙を隠してしまいました。大事なものだったんでしょうか。
聞かれたくなさそうなので、知らないふりをして手を洗いに行きました。
リビングに戻ってきたときにはもうお母さんの手にあの手紙はありませんでした。
「よも、今日は餃子作るから手伝ってね」
「はぁい」
そんなに見られたくなかったんでしょうかね。
なぜかどこかよそよそしいお母さんは焦ったように夕飯の支度をはじめました。
いつもならまだ準備しない時間なのに…。
でも、何も言えずに手伝い始めます。