1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

 智希と望亜も何か察したのか何も言わず、私に駆け寄ってくると2人ともぎゅっと抱きついてきました。

 2人の肩を抱き、お父さんを見つめていると目が合って、一瞬だけ悲しそうな顔をしました。
 でも、その表情はすぐに消えて、お父さんは台所に入って来ると、いきなり抱きしめてくれました。

「よも、お前は俺の娘だからな。絶対どこにも行くな」

「…お父さん?」

 急にどうして?私は、不安になったわけじゃないのに。

 お父さんを見上げると、苦笑を浮かべていてただ私を抱きしめていた。

 まるで、どこにも行かせないように。

 …違う。

 私が離れていくのを恐れているみたいだ…。
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