1人ぼっちと1匹オオカミ(下)
「晴野、やめろ」
「意味分からないじゃないですか。私を産んだ人は私がいらないのに、いなくなったらどうでもいいのに、今さら必要になったから?もし私が死んでいたら、その代わりをどこからか連れて来るのに?…だったら、私である必要なんかないじゃないですか。どうせなら、自分の手で消せば…」
「晴野!!」
振り返らなくても、神野くんが怒っていることが簡単に分かる。
でも、心のどこかで信じていたのに。
経済的な理由やどうしようもない理由があれば、まだ許せたかもしれないのに。
幸せである自信はある。
でも、私をこの世界に生んだ人から否定されるのはつらい…。
勝手に涙が頬を伝う。
泣きたくないのに、勝手にあふれて止まってくれない…。
不意に引き寄せられて、後ろから抱きしめられる。
私を包む腕は苦しいくらいに強くて、震えていた。