1人ぼっちと1匹オオカミ(下)

清牙side

 蓬が飛び出していくのを見送った桃は、ニヤニヤと笑っていて、明らかに何か企んでいた。

 全く、蓬の目覚まし時計を勝手にオフにして焦らせるなんて本当に母親か。

「桃、よもに謝っとけよ」

「あら、いいじゃない。よもは鈍感だからちゃんとデートにふさわしい格好を用意しなきゃ、秋空くんに失礼でしょ?」

「だからと言って、遅刻させてやるな」

「そんなこと言って、よもの格好に見とれてたくせに」

 桃の言う通り、今日の蓬の服装はかわいかった。

 正直、かわいい娘が大人の階段を上りかねないと思う…。

 秋空くんに限ってそんなことはないと思うが心配だ。

「それに、焦ってないとよもがあんなかわいい服装するわけないでしょ?」

「お前なぁ」

 こうなるなら、桃の行動を止めておくべきだった。これでもしものことがあったら、いくら秋空くんでも怒らずにいられるかどうか。

 そんな俺の不安をよそに桃はぐずって泣き出した望亜を抱きかかえ、鼻歌を歌っているのだった。

清牙side END
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